ベトナム戦争時代、解放戦線物資補給ルート(通称、ホーチミン・ルート)監視用に12機のSP-2EがOP-2Eに改造され、VO-67(第67観測飛行隊)に配属された。これらのOP-2Eは1967年11月15日よりNakhon Phanon, RTAFBに展開し、米三軍統合作戦"Operation Igloo White"を支援する任務に就いたが、1968年7月1日のVO-67解散と共に7月上旬には本国へ帰還した。 OP-2Eは、補給ルート一帯にロケット弾に似た形状の発信機能付の振動探知センサーを投下すると共に、地上に突き刺さった振動探知センサーから送られてくる、補給ルート上を移動する車両のかすかな振動データの情報収集・分析ならびに空中中継機EC-121Rへの中継の任務にあたった。外見的には、対潜型Neptune独特の機首下のAPS-20レーダーと尾部のMAD(Magnetic Anomaly Detection)ブームが撤去され、後部胴体下部にはストライクカメラ、MADブーム撤去跡にはチャフディスペンサー、主翼下にミニガンポッドを吊下するなど、本来の対潜任務とはかけ離れた特殊任務の機体となった。 写真のVO-67所属のOP-2E(131525/MR-9)は、1967年11月13日に厚木基地で撮影されたものだが、Nakhon Phanon, RTAFBに向かう途中の前日の夜間に多数が着陸したようで、この日の早朝から数機のOP-2E(MR-2, -5, -8, -9, -10, +α)が次々と厚木基地を離陸していったが、その飛来した正確な機数は未だに把握されていない。機体上面は、初期のOV-10A Broncoや海兵隊のCH-46等のヘリコプターで使用されているフィールドグリーン(FS No.34097)、下面はライトガルグレー(FS No.36440)に塗装され、視認性を低めるためか、国籍標識にまでフィールドグリーンがうすくオーバースプレーされている。 ちなみに、MR-9以外に確認されているOP-2EのBu.No.は、131528/MR-1, 131462/MR-8, 131423/MR-10, 128417/MR-12。 (写真 : AGC 井口 直、解説 : GO!NAVY 広江 隆文) |
ホーチミン・ルート監視用にOP-2Eが使用されたのに対し、ホーチミン・ルートを攻撃・分断する目的で、SP-2Hから改造された4機のAP-2Hを装備したNATC(Naval Air Test Center)管理下のProject TRIM(Trails Roads Interdiction Multi-sensor) Det.がNAF Cam Ranh Bay, South Vietnamに派遣された。後に、Project TRIMを継承するVAH-21(第21重攻撃飛行隊)が1968年9月1日、NAS Sangley Point, Philippineで開隊すると同時に、NAF Cam Ranh BayのProject TRIM Det.もVAH-21Det.と改称され、1969年6月16日にVAH-21が解散されるまでAP-2Hはベトナムで任務を継続した。 全面グレー3色迷彩(FS No. 36440, 36231, 36118)に塗装された4機のAP-2Hは、APS-20を撤去した位置にAPQ-92サーチレーダーと SLAR(Side Looking Airborne Radar)を装備、観測員席後部の機首下には後のA-6C Intruderで本格的に実用化されたFLIR(Forward Looking Infrared)/LLLTV (Low-light Level Television)ターレットを装備、コンピューシステムとしては、A-6 Intruderと同様のDIANE(Digital Integrated Attack and Navigation Equipment)を搭載するなど外見からは想像もつかないハイテク機だった。また、夜間出撃を目的としていたため、エンジンには消炎・消音器が取り付けられたほか、自衛用としてMADブームを撤去した尾部には20mm機銃二連装のAero 11Aターレットを装備した。 写真の、"NAVY"の文字とBu.No."135582"を赤文字で書かれている以外、プロペラ・ブレードとスピンナーも含めて全面グロッシーブラックに塗装されたProject TRIM Det.所属と思われるNP-2Hは、1967年7月27日、立川基地で撮影されたものだが、Project TRIMのAP-2Hの原型としてベトナムで実戦テストに使用された機体とされている。しかし、Project TRIM関連の資料等には135582について一切記述されておらず、Project TRIM Det.に所属していたかどうかは不明だ。 機首の左にFLIR(Forward Looking Infrared), 右にFLAR(Forward Looking Airborne Radar)を装備していると言われているが、公式の資料が皆無のため、これら装備の詳細も定かではない。NAVY機とは見えないグロッシーブラック塗装といい、夜間出撃に備えて排気管には消炎器が装備され、テスト機特有のヨー・メーターが機首上面に突き出しているなど、無骨な姿が余計にミステリアスに思える。 ちなみに、VAH-21Det.で使用された4機のAP-2Hは、135620/(SL)-1, 148353/(SL)-2, 148337/(SL)-3, 145902/(SL)-4。その他に、通常のSP-2H 135578/SL-5が対潜機材を撤去した雑用型に改造され、NAS Sangley PointとNAF Cam Ranh Bay間の人員・物資輸送、連絡等に使用された。 (写真 : AGC 井口 直、解説 : GO!NAVY 広江 隆文) |